伊勢崎駅前再開発   2000

大手土木コンサルタント会社に依頼され、伊勢崎市の将来まちづくりイメージプランの提案を行なった。伊勢崎市は昭和の風情が残る街並みであったが、郊外のショッピングセンターに中心が移り、空洞化が進んでいた。そこに、ほとんどすべての建物を撤去する区画整理事業が行われるという。

私は、「都市文化の再生」というテーマを提案し、長期計画に基づいた伊勢崎ならではの産業と文化を再生するプログラムを立てることが課題だと考えた。市は、地元有力者や文化人による懇談会を招集し、熱のこもった議論が繰り広げられた。地元の有力者の方は、緑多い外国の街並みの写真を紹介し、私はレッチワースなどのまちづくりを誘導する組織の設置が重要であることを述べた。
 驚いたのは、一年後にはその懇談会は中止され、ブルドーザーによる土木工事だけが進められていた。元の街並みはあっという間に無くなり、膨大な空き地が今でも広がりつつある。地元のデパートは閉鎖され、かつての中心的な商店街は、風俗店が並ぶピンク街となっているのには驚いた。懇談会は事業を進めるための手続きとして必要なワークショップとして開催され、その役目が済んだら終わってしまったようである。
伊勢崎市の提案が実現しなかったのは残念であるが、懇談会での体験から「小さな場からの展開」という発想を得たのは、私としては収穫であった。そこには役所の方のほか、地元有力企業の社長、伊勢崎銘泉(伊勢崎の特産品)の関係者のほか、映画プロデューサーといったクリエイターも招かれていた。立場、世代を超え、利害関係抜きで触発する場の展開のイメージは、その後シェア奥沢で花開くこととなる。