水琴窟 2001

三軒茶屋のアートイベントで、キャロットタワーのどこに何を展示しても良いという。
吹き抜けにある使われていないブリッジに、緑と庭を作ろうというアイデアが出た。そこに、私が作った水琴窟を置くということになったが、危険なので、水琴窟は隣接する別の場所に設置し、録音した音を高音質スピーカーで、ロビーに流そうということになった。水琴窟自体は、プロの水琴窟師にとても深いノウハウを伝授された。穴から瓶に水を落とすだけでは、単一の音になってしまう。日本庭園にある古い水琴窟は、「キン・ポーン・チャ」といったさまざまな音がする。それをどうやって再現するか。実は、床の壁面、特に穴の周辺にあることがわかった。古い銭湯の天井を観察した人はわかるだろうが、天井面に少しづつ集まる水滴が、次第に集まり大きな水滴となる。その原理で、瓶の裏面に微妙な凹凸を付けることで、違ったサイズの水滴により、多様な音色が生まれる。瓶の中にワンポイントステレオマイクを設置し、それを真空管アンプで増幅し、ロビーに流した。高さ調整可能な立方体の防音ボックスにはステレオスピーカーを設置し、そこに頭を突っ込むと、あたかもの瓶の中に頭があるような音体験をすることができる。水琴窟から出るパイプで、生の音を楽しむこともできる。ザワザワとした人声と、エレベーターの機械音しかこ聴こえないロビーに、一抹の風涼感を与えたことと思う。後日、唯称寺で高橋悠治の即興演奏と水琴窟が共演した。