矢巾町駅前再開発 2001

岩手県矢巾町から契約を頂き、「PFI」という、区画整理事業と同時に施設をつくるプロジェクトに取り組んだ。この手法によれば、街開きの早い段階に核となる施設をつくることができる。
伊勢崎市同様、まず広域的景観シミュレーションから取り組んだ。最初の提案に表現されているのはボリュームモデルであるが、周囲に建築が立ち並ぶことを想定し、通り抜け導線を中心とした計画である。なにしろ、冬が大変寒い地域である。
 この段階から地域住民の代表、商工会の関係者、近隣の大学生などを集め、この場所に何が欲しいのか、という提案型ワークショップを何回か開催した。言葉のやり取りだけだとイメージが広がらないので、参考になりそうな事例写真をたくさん用意し、気に入ったものを選んでもらう。参加者はいくつかのテーブルに分かれ、写真とアイデアをポストイットにまとめ、説明しながら貼っていく。様々な提案をテーマごとに皆で分類し、話し合いでグループごとのキーワードを書き込むと、提案イメージ案が完成する。案が出揃ったところで、グループごとに代表者を決め、思い思いのやり方で発表をしてもらう。最終的に1階は展示・イベントスペースともなる、通り抜け通路風のカフェ。2階が図書館であるが、PFI方式のため営業時間を夜9時までと長く取れたのが好評のようだ。コンセント付きのコワーキングスペースもある。3階は世代ごとに分かれた子供の遊び場(託児施設)、鏡張りの壁をもつダンススペース、共用キッチンなどがある。1階には、パーテーションで分けられる多目的室の他、二つの音楽室がつくられた。役所との契約の関係で、実施設計は地元の設計事務所が担当し、外観は私のイメージとは違ってしまったが、内容的には、ほぼ私の基本設計通りに完成させることができた。
 伊勢崎市では事業規模が大きかったために、まちづくりという気運を生み出せなかったが、行政規模が小さい矢巾町では、最初にお声がけをいただいた担当者が最後まで一貫して事業を推進していただいたことが大きい。