“ラストマイル”とラストワンマイル

2018年4月、東京オリパラ組織委員会の方から、はじめて”ラストマイル”という言葉をうかがいました。英語的には”Last One Mile”なので、?と思ったのですが、”ラストマイル”とは、競技会場に近い指定駅から競技会場までの徒歩ルートのことでした。例えば、千駄ヶ谷駅とメインスタジアムとの距離は300mくらいですが、ラストマイルと呼んでいます。

上の地図は、本当の1マイル(1.6km)の線を重ねたものです。オリパラ組織委員会のリストに原宿駅は入っていませんが、1マイルに入っています。実際歩いてみると一息で歩ける距離です。やはり山手線の駅は利便性が高く、原宿は人気の観光スポットなので、利用する人は多いと思います。原宿駅も”ラストマイル”に加えることを、オリパラ組織委員会のご担当に提案をしました。

東京ヒートマップ (2005年7月31日14時地上2m 独立行政法人建築研究所)を使用しました。

「東京ヒートマップ」を重ねてみました。
街路がとても暑いのに対して、明治神宮の森(左の緑色)はとても涼しいです。ラストワンマイルに入っている新宿御苑も2〜3度は涼しいので、ぜひ誘導したいものです。
残念ながら、新宿御苑の入園料が500円に値上げされたので、気軽に立ち寄るには敷居が高くなってしまいました。オリンピックのチケットを見せると無料で通り抜けて新宿まで行ける、といった配慮ができないのでしょうか?東京都が進める暑さ対策「クールミスト」の設置の助成金が一箇所5000万円ですが、その金額で10万人が無料で入園することができます。
新宿御苑に問い合わせたところ、そのような考えは無いということですが、ぜひ、このアイデアを東京都に提案したいと思います。

出所:2019年6月19日 輸送運営計画V2(案)オリパラ組織委員会・東京都

距離が近い2駅という基準で選ばれたラストマイルとしての「指定駅」は、千駄ヶ谷駅と北参道駅です。これらの駅の指定には、観戦を終えたら一刻も早く電車に乗り家路を急ぐという、一般市民の発想があるように思われます。遠方からの客で、ホテルに早く戻る必要が無い人には、急ぐよりは、余韻を楽しみながら街歩きを楽しみ、ゆっくりと移動するといった希望もあるでしょう。それを暑いから推奨しない、早く涼しい電車に乗りなさい、といったルールが見えますが、住民でない人達は、電車に乗ってどこに行くのでしょうか。検索で出てくるおすすめの観光スポットは、おそらくひどい混雑で、熱中症となる恐れが高いでしょう。

 明治神宮、表参道といった観光スポットに近い原宿駅の利用者が多いと思われますが、利用勝手が一番良い山手線の駅はラストマイルに指定されていません。実際、原宿から歩くととても近く感じます。しかし、猛暑時にはその距離も問題なので、随所にひと涼みスポット(民間施設)を開拓すれば、安全に歩けます。

2019年7月の現地調査でみつけた、ひと涼みスポット候補(原宿からスタジアムまで)

一般的には「スタジアム通り」が有名なので、外苑前駅から向かう人が多いと思いますが、スタジアム通りの突き当たりにはゲートが設置されず、入場ができないということです。このようにアプローチしようとすると迂回が必要で、歩行距離が長くなり、熱中症の危険性が高まることが懸念されます。

収容人員6万人が猛暑時に街に出されるという状況から、このラストワンマイルエリア全体としての安全な歩行者環境を活かすことが、クールシェアの提案です。このエリアには多くの人気商業施設、美術館などがあり、それらの「クールシェアスポット」でゆっくりとした時間をすごす。移動には「ひと涼みスポット」を使って、無理なく移動するという組み合わせです。いわば、街全体で観客をもてなすことで、午後の競技空白時間帯のバッファーとするといった発想もあると思います。