URBAN ECOLOGY 都市を豊かにする関係づくり+art commonsアートが結ぶ場づくり-堀内正弘退職展-

堀内からのメッセージ3月31日から4月12日まで多摩美術大学八王子校舎アートテークにて「堀内正弘 退職展」を開催します。直前のご案内となり申し訳ありません。開催場所が遠いので恐縮ですが、もしご機会があればお立ち寄りください。展覧会の内容は、ホームページで順次公開していく予定ですのでどうかしばらくお待ちください。この展覧会のために、私の卒業制作から最近の活動まで見渡した印象は、自分のやりたいことばかり熱中していたということです。反省点も多くありますが、仕事には手を抜かなかったと思います。さて、ご報告になりますが、昨年11月、淡路島で作業中に脚立から落ち、首の骨が折れ、4肢不随の身となり、両手が使えなくなってしまいました。まさに九死に一生を得ましたので、人生の再出発ということで、これからの人生を明るく前向きに歩んで行きたいと思います。幸い、頭脳・目・耳等には全く影響が出ていないのですが、1番好…

退職展関連動画は、こちらからご覧いただけます。                                                                        

シェア奥沢   クールシェア   仲町台駅前センター街づくりの記録  仲町台協定ビデオ    東京自転車グリーンマップ  限界芸術論(鶴見俊輔) 横浜の都市デザイン ポートサイドと仲町台   ビーチクリーンアップ  シェア奥沢二台ピアノコンサート   電気自動車を自宅のソーラーパネルで走らせる…

art commons アートが結ぶ場づくり

自宅の一部を開放し、シェア奥沢という「小さな場」を開いた。様々なワークショップ、音楽会、食事会などのほか、コワーキングスペースとしての利用も多く、ここでの出会いから新しい活動が生まれている。シェア奥沢には、ひとりでリラックスできる場所もあり、さまざまな人の居場所となっている。この「小さな場」が成功したのは、「ただの古民家」という居心地の良さの価値が大きい。シェア奥沢で起こることのほとんどがartに関連していることに気がついた。音楽、美術以外にも、人の心をとらえる何かがあればartであり、artで人はつながるのかもしれない。 アイデアをひとりで考えているだけではなかなか展開しないが、少人数での何気ない会話から、アイデアが具体化することがある。モンマルトルの、小さなカフェでのアーティストの出会いから印象派が始まった。ニューヨークのコワーキングスペースでは、そこでの異業種の人との出会いから新しい…

ヨコハマポートサイド 1988

都市デザイン室の方々を前に、プレゼンテーションをする機会があった。すぐ後に、若い担当者が歩み寄り、「堀内さん、目から鱗が落ちました」という。翌年には横浜市から契約をもらった。 「三層構成」をメインコンセプトに、次世代の都市を提案した。日頃から、日本の都市スカイラインは何故ここまで魅力がないのか、と感じていた。ポートサイドの敷地形状には多様性があることに気づき、それぞれの敷地に合った設計をし、都市全体の日陰計算をしたところ、合理性があることがわかった。なによりも、景観として多様性の感じられる街並みとなった。 主要街路に面する低層建築は、2階建てではバランスが悪く、4・5階建てが都市らしさを感じることがわかった。遠景として見える建物頂部は、ペントハウス等を設置することを誘導した。結果として、自然なセットバックを活かしたブロック構成となり、これを三層構成のまちづくりと名付け、地域協定に織り込まれ…

日比谷シャンテ広場 1987

都心に生まれた、一本の大きな楡の木と、カスケードを伝う水の流れがある、誰もが一息つける憩いの場。道路の喧騒は一枚の壁によって遮られている。さて、どのように作品が実現できたか、背後のエピソードを紹介しよう。米国でお世話になった片山利弘先生のお宅にパーティーで訪れた時、先生は一枚の絵を持ってきて、「堀内くんこれどう思うね?」とおっしゃるので、「良くないですね」「僕もそう思うんだよ」という会話があった。先生は、広場の路面パターンの提案を依頼されたのだが、そのまわりの建物が良くないという。プレゼは三日後だったが、私が建物の代替え案をつくって持参することにした。プレゼ当日、何も予告無しに提示された模型を見て、5分ほど熟考したマスターアーキテクトは、「よし、これでいこう!」と言った。集まった関係者に動揺が広がったが、このようにして私はポケットパークを実現することができた。(残念ながら、今はゴジラ広場に…

仲町台街づくり 1993

港北ニュータウンの仲町台に、街づくりをするチャンスを横浜市から頂いた。地元の方々、誘致されたドイツ学園や、企業のキーパーソン、そして、都市デザイン室のメンバー、住都公団などが一堂に会し早速勉強会が始まった。多様な意見を取りまとめるために、多くの事例を紹介し、CGによるシミュレーションを使った検討作業が進められた。 デザインガイドラインのテーマを決めるにあたって、特定の地域文化の真似はしたくなかった。そこで提案から選ばれたのが「ネオクラシック」である。ドイツが有名であるが、日本を含め広く地域独自の「ネオクラシック」が見られる。 建設が先行する、駅舎、歩道橋、集合住宅などの設計を私が引き受け、ネオクラシックを適用した。つくる場合の参考にしてください、というわけだ。この方法のヒントは、大倉山商店街では、皆がよく知っている大倉山集古館をテーマに、統一感のある商店街が作られた。まちづくり協定のパンフ…

秋留台計画 1999

秋留台地域計画は多摩ニュータウンの後を継ぐために、複数社の設計チームで検討が進められ、私は主に、GIS(地図情報)を使った地形データや三次元CGによる各種シミュレーション、そして、街区の整備イメージ提案などを担当した。 主要な幹線道路の位置は既に決められている。丘陵地帯で大量の土の移動が発生するので、その計算も私の役割だった。地区外に土砂を排出しないことが原則である。最上位にあるのが環境アセスメントで、災害発生の予防や、貴重な生態系の保護が求められる。極端な堀割り道路は避け、安全に走行ができ景観的にも美しいのが理想である。一方で、開発としては産業の誘致及び、居住人口の定着が求められる。このような相矛盾する要素を同時に検討し、最適な関係性を持たせるという大変な作業である。ある会議の後、コンサルタント2社の代表に呼ばれ、開口一番「堀内さん、慣れていないね」と言われた。私はびっくりしたが、すぐそ…

伊勢崎駅前再開発   2000

大手土木コンサルタント会社に依頼され、伊勢崎市の将来まちづくりイメージプランの提案を行なった。伊勢崎市は昭和の風情が残る街並みであったが、郊外のショッピングセンターに中心が移り、空洞化が進んでいた。そこに、ほとんどすべての建物を撤去する区画整理事業が行われるという。 私は、「都市文化の再生」というテーマを提案し、長期計画に基づいた伊勢崎ならではの産業と文化を再生するプログラムを立てることが課題だと考えた。市は、地元有力者や文化人による懇談会を招集し、熱のこもった議論が繰り広げられた。地元の有力者の方は、緑多い外国の街並みの写真を紹介し、私はレッチワースなどのまちづくりを誘導する組織の設置が重要であることを述べた。 驚いたのは、一年後にはその懇談会は中止され、ブルドーザーによる土木工事だけが進められていた。元の街並みはあっという間に無くなり、膨大な空き地が今でも広がりつつある。地元のデパート…

矢巾町駅前再開発 2001

岩手県矢巾町から契約を頂き、「PFI」という、区画整理事業と同時に施設をつくるプロジェクトに取り組んだ。この手法によれば、街開きの早い段階に核となる施設をつくることができる。伊勢崎市同様、まず広域的景観シミュレーションから取り組んだ。最初の提案に表現されているのはボリュームモデルであるが、周囲に建築が立ち並ぶことを想定し、通り抜け導線を中心とした計画である。なにしろ、冬が大変寒い地域である。 この段階から地域住民の代表、商工会の関係者、近隣の大学生などを集め、この場所に何が欲しいのか、という提案型ワークショップを何回か開催した。言葉のやり取りだけだとイメージが広がらないので、参考になりそうな事例写真をたくさん用意し、気に入ったものを選んでもらう。参加者はいくつかのテーブルに分かれ、写真とアイデアをポストイットにまとめ、説明しながら貼っていく。様々な提案をテーマごとに皆で分類し、話し合いでグ…

東京自転車ライド+東京自転車グリーンマップ

江戸時代にタイムスリップ 世界各地で大人数で一緒に街を走る「自転車ライド」というイベントがある。たまたま、自転車ライドに参加したことのある方と出会い、ぜひ東京で東京自転車ライドを始めよう、と意気投合した。最初の実施が2007年4月のアースデイだったが、初回にも限らず700人の参加者があり、神宮外苑から皇居前広場までの休日の都心を自転車で走り抜けた。休日の都心が如何に自転車で走りやすいかということを体験し、お互いの顔の見える自転車乗り同士は友達になりやすいということもあり、とても楽しいイベントとなった。その後、毎年のアースデイにこのイベントは継続して開催されている。 当時私が考えていた東京自転車グリーンマップの制作仲間も一気に増えた。東京自転車グリーンマップのコンセプトは、「週末は車でドライブに出かけるよりも自転車で都心を走ろう」ということだ。都心を自転車で走ってみると、有名な庭園や美術館な…

シェア奥沢

これは、東日本大震災直後に作った「SHERE」を中心としたダイアグラムで、これを作ったすぐ後にクールシェアのネーミングが決まった。ここで「家カフェ」と書かれている「小さな場」が、後ほどシェア奥沢として実現することになる。 クールシェアが始まり、メディア取材が多くなったが「ご近所でクールシェア」を紹介する事例が無い。目をつけたのが親戚が住んでいて、20年近く空き家状態だった隣家である。空き家といってもゴミ屋敷で、手のつけようがない。 たまたま卒業生が、展覧会に出展する作品の制作場所として貸してくれないかと言う。少し片付けたら空間が意外と天井が高く魅力的なことに気がついた。 次も多摩美の卒業生からの話であるが、慶應大学の教員有志が大学に近い民家を借りて「三田の家」として使用していたのが使えなくなるので、代わりの場所を探していると言う。そこでは、「共奏キッチン」という、参加者が皆で一緒にお料理を…

水琴窟 2001

三軒茶屋のアートイベントで、キャロットタワーのどこに何を展示しても良いという。吹き抜けにある使われていないブリッジに、緑と庭を作ろうというアイデアが出た。そこに、私が作った水琴窟を置くということになったが、危険なので、水琴窟は隣接する別の場所に設置し、録音した音を高音質スピーカーで、ロビーに流そうということになった。水琴窟自体は、プロの水琴窟師にとても深いノウハウを伝授された。穴から瓶に水を落とすだけでは、単一の音になってしまう。日本庭園にある古い水琴窟は、「キン・ポーン・チャ」といったさまざまな音がする。それをどうやって再現するか。実は、床の壁面、特に穴の周辺にあることがわかった。古い銭湯の天井を観察した人はわかるだろうが、天井面に少しづつ集まる水滴が、次第に集まり大きな水滴となる。その原理で、瓶の裏面に微妙な凹凸を付けることで、違ったサイズの水滴により、多様な音色が生まれる。瓶の中にワ…

淡路 Project Based Learning

淡路の第一印象 淡路島は、なんといってもそのロケーションに魅せられた。海と山にひらけた眺望を望み、そこに佇んでいるだけで雑念を洗い流し、心からリラックスすることができる。風にまかせてすぐ近くにホバリングしている海鳥も同じ気分に違いない。ここから望む瀬戸内海への落日は特別に美しい。地元の方々と一緒にビーチクリーンアップをした。都会育ちの学生にとっても特別の体験だったようだ。淡路島北部は緩やかな傾斜地が殆どなので、散策をすると海の手前に広がる棚田が美しい。ご近所はほとんどが兼業農家で、お勤めのほかレストランや民宿の経営などもされている。日当たりがいいのでお米がとても美味しく、近くのレストランでは、米は自家栽培のものを使っている。 セカンドハウスとして時々滞在する身だが、ご近所の方とはすぐ知り合いになり、お米や果物を頂くというようなご近所付き合いが始まった。驚いたのは高齢者が皆様お元気なこと。ご…

Agnaa in Shinjuku @藝大美術館

藝大美術館で開催された「買上展」にて、堀内の藝大の卒業制作「Agnaa in Shinjuku」が展示されました。(2023年3月31日〜5月7日) 今回改めて、多摩美術大学アートテークギャラリーで作品複製(一部)をご覧いただけます。(2025年3月31日〜4月12日)以下から、作品の全体をご覧になれます。下をクリックしてください。 こちらで作品の詳細をご覧いただけます。…

グリーンマップ:市民が参加して作る地元の環境地図

ニューヨーク在住のエコロジスト、ウェンディー・ブラウアーの呼びかけにより、世界各地でグリーンマップがそれぞれの地域を表す情報地図が作られている。子ども目線で作られたグリーンマップも多く、子どもが提案して世界標準になったグリーンマップアイコンもある。このような展開に注目し、富士フイルムと共同して子どもが作るグリーンマップを呼びかけた。新聞広告を掲載し、興味のある個人や学校に解説パンフレットとアイコンシールをセットで送り、できたグリーンマップを送ってもらった。国連大学のギャラリーで、選ばれた作品の展示会を行った。 東京アートジャングル東京国際フォーラムの開館5周年記念イベントとして、多くのアーティストと一緒にグリーンマップも招待された。ラッピングトレインは、吊り革のシールまで1両まるごとグリーンマップの紹介に使われた。(退職展では展示したが、ここでの紹介は省略する。)https://www.a…

2020東京オリンピック施設周辺 + 札幌のWBGT値(環境省測定)の可視化

環境省が測定したオリンピック施設周辺のWBGT値が公開されました。データでは情報が伝わらないので、色分け表示したグラフでわかりやすくまとめました。マラソン・競歩コースが札幌に変更されましたので、札幌の測定データ(環境省)も付け加えました。以下でダウンロードしてご覧下さい。A3サイズに出力して切り貼りすると見やすくなります。データ元:http://www.wbgt.env.go.jp/survey_tokyo2020.php 2020 Tokyo Olympic Game period WBGT valuesThis graph is designed using open data measured and provided by the Ministry of the Environment (Japan). Visualization of the data is done by Ma…

2020東京オリンピック開催予定期間WBGT値 比較

WBGT値とは、気温、湿度、日照、風、輻射熱(短波・長波)の影響を反映した値で、「暑さ指数」とも呼ばれています。酷暑時に人体に与える影響が総合的に評価でき、その値は気温よりも低い値となります。2020年の東京オリンピック開催予定日について、2008〜2019年のWBGT値、および2019年の地域別の比較を一覧にまとめ、日本ヒートアイランド学会全国大会(2019年9月23日)にて発表しました。 この表から、以下のような事実が読み取れます。1.2014年頃から、東京の猛暑日が顕著になり、2019年はこれまでで最も「危険」が多くなりました。2.オリンピック招致が決まった2013年時点では、「危険」はほとんど発生していませんでした。3.地域別の比較では、東京と、隣接する府中、埼玉のWBGT値が特に高く、これは東京都心の集積によるヒートアイランド現象の影響と考えられます。都心より南側となる、江東・臨…

猛暑時の公園・庭園は安全か?

シェアマップには屋外の庭園や公園などが「クールシェアスポット」あるいは「ひと涼みスポット」として登録されています。昨今の猛暑日では、路上などほとんどの都市空間は熱中症になる危険が高い状況ですが、庭園や公園などは果たして安全に滞在できる状況なのでしょうか。 猛暑の日に、シェアマップに登録されている都心の名庭園やポケットパークなどがどれほど涼しいのか、あるいは涼しくないのか、2019年8月3日に測定検証をしました。 当日の 14:00 の環境省が公表するWBGT値は31.3℃(基準値とします)でした。測定の結果、日陰の無い歩道は、基準値より約1℃高くなり、街路樹の日陰がある歩道は基準値よりも約1℃低くなる、というわかりやすい結果が出ました。街路樹の茂る「表参道」は、日向でも気温上昇が押さえられていることが確認できました。 代々木公園と新宿御苑は、日向でも基準値より約1℃低く、日陰では約2℃低く…

オリンピックスタジアムは午後に閉鎖されるので、観客は猛暑の屋外に出なければならない

オリパラ組織委員会のホームページに公開されている競技スケジュール表から、各競技を合わせたオリンピックスタジアムの使用時間のまとめ表を作りました。作って気がついたのは、午後の時間帯、12:30〜19:00頃は競技予定が入っていないということです。オリンピックスタジアムには冷房装置が無いので、室内気温が上昇するので、使用中止にしたのかもしれません。 オリパラ組織委員会に、その間、観客がスタジアム内に滞在できるか問い合わせたところ、観客は競技ごとに入れ替える。(外にでなければならない)ということです。 昨年、今年のような酷暑の場合、WBGT値が 31℃を越え「危険」(外出は控える)の状態になることが予想されます。観光庁が推奨するアプリSafety Tips では、その旨の警告が出るはずです。 こういう状況で何万人もの観客はどうしたら良いのか、オリパラ組織委員会のご担当にうかがったところ、「自己責…